昨年6月にオープンをした石川県立図書館
仙田満先生率いる環境デザイン研究所の設計で話題となっている石川県立図書館で、ランドスケープ設計のお手伝いをさせて頂きました。広大な敷地の中で、図書館本体を取り囲むように、幾つかの性質の異なる庭を配しています。正面は、図書館をセレブレートするようなオープンな広場に、桜や、石川県内で馴染みの樹木、そして元々この土地にあった桜や松の巨木を移植し、個性豊かな木々の競演の場を作っています。図書館の左右には図書館内部の延長として読書などが愉しめるよう、随所にベンチを配し、花木や果樹をたくさん取り入れた「読書の庭」、北西部には、児童図書コーナーと一体となって愉しめる「お話の森」というコーナーを作りました。「お話の森」は石川県の文化や自然と様々な関係のある草花を多種取り入れ、更に野菜と果樹を栽培する畑も作りました。この庭の中には、これら石川県の自然などを学べる小さな本箱も置かれています。
一方で、この新図書館は、金沢市内を流れる犀川、浅野川に挟まれ、金沢城と兼六園がある小立野台地と呼ばれる丘の上に位置し、周囲は前田家にゆかりのある寺社の多い静かな住宅地となっています。この環境のポテンシャルを生かし、このランドスケープが街と図書館を繋ぐ、「界面(インターフェイス)」のような場となることを目指しました。図書館自体は、仙田先生が「知の殿堂」と位置づけており、図書館自体が「本と知識の森を彷徨う庭園」を目指したとされますが、ランドスケープも、リアルな草木の緑を通した「知の森」への導入域、または拡張域として、さりげなく有意な領域となってもらえることを願っています。